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グランド・オダリスク|La Grande Odalisque【1分解説】

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モナ・リザ (過去記事: https://www.paris-book.com/entry/mona/lisa) と並んで、ルーヴル美術館の2大美女と称される【グランド・オダリスク】はドミニク・アングルが1814年に描いた油彩画です。


陶器のような肌、背中から腰にかけて湾曲したライン、静かな視線で、見る者を魅了する裸婦像です。しかし一目みれば、気がつくと思いますが、背中と腕は伸びすぎているし、お尻と太ももは太すぎます。


全裸の美女が背中越しに振り返るという古典的な構図でありながら、なぜこのような不自然にデフォルメがかった絵が描かれたのでしょうか。


今回はルーヴル美術館の2大美女と称される【グランド・オダリスク】の鑑賞ポイントを1分解説します。


パリに来る予定のある方、ない方、どちらの方々にも知識として役に立つ記事にしようと思いますので、ぜひ最後までお付き合い下さい。

 

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ドミニク・アングル

ドミニク・アングルはフランス新古典主義における最後の巨匠です。正確なデッサンを基本としたアカデミックな作風の画家として確固たる地位を築きます。生涯にわたり理想美を追い求め、その多くの作品は傑作として今も絵画史で輝いています。

 

グランド・オダリスク

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このグランド・オダリスクは、アングルがイタリア滞在中に、ナポリ王妃のカロリ-ヌ・ミュラにより発注された作品です。しかし絵の完成時にはナポレオンが失脚していた為、女王の手には渡らず、1819年のサロンに出品されました。

 

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しかし、この作品は大きな批判を浴びます。長く引きのばされたその背中は、『椎骨が3つ多い』『左腕と右腕の長さが違う』などと多くの批判がなされました。


これらを当時の批評家はアングルの間違いととらえましたが、もちろんずば抜けたデッサン力を誇るアングル自身にそれが分からなかったはずはありません。


では、なぜアングルはわざと背中を引き延ばして描いたのでしょうか?

 

表現の模索

そこには、この時代の科学技術の進歩と関係がありました。カメラの技術の躍進です。芸術であると同時に、人の外見を伝えたり残したりする記録の意味も担っていた絵画の存在が、カメラの技術躍進により脅かされたのです。


そこでアングルは、絵画にしかできない表現を模索します。女性の肢体、特に背中に独特の魅力を感じていたアングルは、それをさらに強調し、芸術的な理想を求めてこのようなデフォルメを試みました。


残念ながら当時は、アングルの意図は理解されず、絵画にしかできない表現の挑戦をこれ以上続けることはできませんでした。しかしアングルの心配をよそに、絵画という表現はどんどん発展していきます。


写真が真実をハッキリと映し出すからこそ、シュールレアリスムやキュピズムといった新しい芸術のムーブメントが発展していきました。『新しい技術革新により、既存の価値観が試され、進化する』現代社会にも似たとこあるなぁと、この絵を眺めながら考えてしまいます。


現在ルーヴル美術館に飾られてある『グランド・オダリスク』には、そういった時代背景と画家の思いがあったのです。ぜひルーヴル美術館に足を運んだ際は、思い出してもらえると嬉しいです😌

 

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